1巻<スワン家のほうへⅠ>pp67-108.
今日の箇所は大半が、主人公が就寝前に母親からの接吻を請い願う気持ち(不安)を描いたものでした。
最初は随分大げさだなと感じるのですが、大人の恋愛感情にも喩えて描かれていることから、心理学的に言えば、愛着の問題を描いているのかなとか…。
不安から子供なりの懸命な画策したり、意外な救済を経て罪悪感を覚えたり、やがて不安が鎮静するとそれまでの不安を理解できなくなったり…神経症的なところがある人なら、理解できる心の過程かもしれません。
この作品は、多分マドレーヌの場面が1番有名ですが、既に似たような描写が今日の箇所にもありました。
母親の接吻を授けられずに失意のなか登る階段のニスの匂いは、そうした夜の心痛を吸着しているため、より過酷に感じると。
香りと記憶の関連の深さは周知のことでも、プルーストの表現は実に繊細で、表現に関して集中力の高い人だったのだろうなと感じます。
それから興味深かったのは、主人公の祖母の写真に対する考え方です。
現代では写真は芸術の一ジャンルとして認められていますしが、この時代、特に絵画に造詣の深い人たちにとっては、写真=機械による表現は俗悪なものだったのでしょうか。
濃密な文章を読むのは、たった数十ページでも大変ですね。
何とか丁寧に読み続けていきたいです。