1巻<スワン家のほうへⅠ>pp108-148.
今日は、あの有名な場面が出てきました。
紅茶に浸ったひとかけらのプチット・マドレーヌの風味や匂いから、コンブレーでの日々が蘇るという場面です。
恍惚から記憶を呼びさまそうとする過程ってこんなに長く書かれていたっけ?と思いましたが、記憶というのは作品の最重要テーマでもありますものね。
この箇所では、匂いと風味は想い出という巨大な建造物を支えてくれるといった表現があり、とても巧みだと感じました。
主人公の原体験は、叔母からシナノキのハーブティーに浸したマドレーヌのかけらをもらっていたことですが、シナノキのハーブティーというのはいわゆるリンデンのことですよね。
リンデンは、風邪のひきはじめにいいという印象がありますが、鎮静効果もあるようですから、気が立っているときに飲むという叔母の使用法も適切なのですね(でも、私だったら、多分カモミールティーを選びそうです)。
それにしても、紅茶に浸したマドレーヌはいいけれど、ハーブティーに浸したマドレーヌってどうなんだろう…って思いました。あまり美味しそうには思えないけれど、いつかやってみようかな…。
こうしたテーマとは関係ないけれど、主人公の母親が見せるフランソワーズへの気遣いが素敵だなと思いました。人の心の機微が分かる女性なんだろうなと感じるエピソードです。
叔母とか祖母の姉妹など、主人公の周りには結構癖の強そうな親族がいるなかで、母親はかなり繊細(神経症的?)で共感的な人物に描かれていると感じます。
実は、私は、物とか風景の描写を読むのが結構苦手なんです。
今日の箇所も、街の風景とか建物の中の描写は、感想を書くほど読み込めていません。